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「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」感想 ~私たちは皆「ベン叔父さん」だった【おすすめ度:★★★★】

「アベンジャーズ エンドゲーム」後、MCUフェーズ3のラストを飾る「スパイダ―マン」シリーズ最新作。

 

★スパイダーマン ファー・フロム・ホーム

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監督:ジョン・ワッツ

キャスト:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ジェイク・ギレンホール

 

◆予告編◆

www.youtube.com

 

◆あらすじ◆

夏休みに研修旅行で欧州へ行くことになったピーターは、思いを寄せるMJに告白しようと計画していた。しかし、最初の目的地・ベネチアに着くと、そこに水を操るモンスターが出現。混乱に陥るベネチアだったが、突如現れた謎のヒーロー・ミステリオが人々の危機を救う。ニック・フューリーらとも連携して未知の敵“エレメンタルズ”と戦うことになったミステリオ。ピーターもそのミッションへ参加することになるのだが…。

 

◆感想(ネタバレあり)◆

 

これまでのスパイダーマンシリーズは、「高校生役なのに演じるのは30歳ぐらいの俳優」という点で、描く心理や内容がどこか「私達と同じ大人たちのもの」として見ていた部分があります。

ヒーローとしての責任とMJやグウェンとの恋との間で悩むのはどのピーター・パーカーにも共通だけど、これまでの2シリーズはどこかもっと「ヒーローの人生って辛い」という要素を感じていました。

それはそれで好きな部分。

トビー・マグワイヤのピーターは「大いなる力には大いなる責任が伴う」という台詞を背負い続けるナイーブさに満ちていたし、アンドリュー・ガーフィールドのピーターは本人のそもそも持ってるシックボーイ感に上塗りするかのようにグウェンを失うという辛すぎる事件のせいで、今最初から見直しても結末を思い出して辛くなります(エマ・ストーンのグウェンは至高)。

 

だけど、トム・ホランドという若く、陽性の魅力が強いフレッシュなキャストを抜擢した時点で、MCUにおけるスパイダーマンがどういう存在かはある程度刷新され、新しいコンセプトが出来ていました。

それは、アイアンマンのフォロワーであり、キャプテン・アメリカのファンであり、彼らに認められたい、彼らのようになりたいと願い奮闘する等身大の高校生、ピーター・パーカー。

初登場が単独作ではなく「シビル・ウォー」であり、今回の作品に行く前に「インフィニティ・ウォー」「エンドゲーム」を挟んだことで、そうした先輩ヒーローたちの存在を追いかける者としてのピーターのキャラクターは醸成されていました。

トム・ホランドの演じるピーター・パーカー=スパイダーマンは、アイアンマンやキャップに憧れ、コスプレをする子供たちを代替するような存在でもあるんです。

 

だからこそ「ファー・フロム・ホーム」は、そうした偉大なメンター達を失ったピーターが初めて経験する試練であり、大人の階段を登る話であり、ヒーローとしての自分はこの先どうありたいのかを受け止め始める物語。

正しく青春映画であり、観る人すべてを「ベン叔父さん」視点に変えてしまう魔力を持った傑作になっていました!

そして、MCUの次なるフェーズへの布石も…

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1、新しいメンター候補=ミステリオとの対峙

正義のために身を削りながら戦う新しいヒーロー・ミステリオ。

ピーター達の前に突如登場した未知の敵・エレメンタルズを一人で撃退するその姿、自分の悩みを傍で聞いてアドバイスをくれる信頼にたる姿、そして何よりも「眼鏡をかけたらトニー・スタークにそっくり」というどうやっても彼を重ねざるを得ないその風貌に、ついつい心を許し、そして自身でその重みを背負う事を拒否してトニーからの贈り物であるイーディスを渡してしまったピーター。

その失敗が招いた事態こそ、彼が大人の階段を登るための試練でした。

 

正直ね、あのジェイク・ギレンホールがミステリオな時点でどこかで裏切るだろうという事は分かっていたんですが、「…そこでかー⁉」という素晴らしいタイミングでのネタバラシ、そしてネタバラシ以降のあまりに活き活きしたジェイク・ギレンホールの演技にテンション上がらないわけがなかった。

ほんと、顔も何も変わっていないのにあの時点からガラっと表情が変わるし、ギラついた目つきが癖になるし、野望が表情に滲み出すぎていて、こういうアドレナリンの出すぎた役柄を演じる時のジェイクの煌めき方は本当に凄い。

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しかし、ミステリオという役柄については、本当に拗らせの塊で切なく哀しいキャラクターなんですよね。

あれだけ憎悪を持っていたはずのトニー・スターク=アイアンマンと同じような面影をピーターに感じさせる風貌の寄せ方。

その鋼鉄の装備も、手から発される力を活用した攻撃も、その飛行のフォームも。

ピーターにそう感じさせ心を開かせる事が狙いなのだとしても、自分を貶めた憎き人間の影響下に置かれてしまう切なさ、哀しさは、ミステリオをただのヴィランにおさまらない人間臭い魅力を持ったキャラクターに仕上げていたと思います。

そして、自身の死をもってその狙いの全てを完遂する悪役というのもまた最高。

敬愛から憎悪に変わったトニー・スタークへの復讐を、その愛弟子を貶める事で成し遂げるって、段々二次創作みたいになってきたけどまさにミステリオが考えそうだなあという納得感がありました。

 

そんなミステリオやエレメンタルズ(という名の拡張現実とVRを使った仮想敵)との闘いのシーンは、縦横無尽なカメラワーク、奇想天外なスパイダーウェブ活用術など、アイディア満載の素晴らしいアクションシーンになっています。

特に拡大解釈気味な拡張現実に襲われるピーターのシーンはこれまでのシリーズにはないフレッシュな演出だったし、その仮想敵の中に入り、内部構造を破壊していく描写なども非常に面白い。

拡張現実に翻弄されていたピーターが最後、「ムズムズ」とメイおばさんに呼ばれる内なる感覚を発揮して“本当のミステリオ=クエンティン・ベック”を捉えるという展開は、「メンター」という存在にある意味甘えていたピーターが自身の力で試練を乗り越え、そして自身の力ですべきことを成し遂げるという最高のエンディングでした。

 

しかしね、エンドロールで驚愕の事実が明かされるんですよ…

 

確かに、ミステリオらのチームが作った仮想敵がいくら電磁波や破壊をコントロールしていたとしても、さすがにシールドがあっさりそれに騙される事には違和感があったんですよね、そしてその拠点のチープさにも。

そんな違和感を颯爽と回収していくとは!そうか全て織り込み済みだったんですね…。

ミステリオによって名前も明かされ、そして彼の殺害の容疑者としてのイメージを植え付けられてしまったピーター。

果たしてMUCフェーズ4はどうなる…!?

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2、MJとの恋が可愛い。とにかく可愛い。

初期シリーズのキルスティン・ダンストのイメージがとにかく強いMJ。

ゼンデイヤのMJは、その風貌も、キャラクターも、全てを刷新して差別化していましたが、正直前作「ホームカミング」ではその魅力が伝わりきっていないと思っていました。

というか、伝わりづらいんですよね、皮肉屋で内気でちょっと変わり者だから。

だけどそこで積み重ねてきたものが、今回の作品でぱーっと華開いたかのように、2人のケミストリーが炸裂した事がとても嬉しかった。

キルスティンが演じるMJとトビー・マグワイヤが演じるピーターとの恋も、エマ・ストーンが演じるグウェンとアンドリュー・ガーフィールドが演じるピーターとの恋も、圧倒的にMJ/グウェンの地位が所属するコミュニティ内で高すぎて、ヒロイン側の努力というか、ヒロイン側がピーターに近づこうとする道筋が見えづらかったんですよね。

(それはそれで上記2作品は好きです。高嶺の花)

だけど、ゼンデイヤ演じる皮肉屋で内気なMJが「私はあなたを見ていた」という告白、「私だけはあなたがスパイダーマンだって分かってた」という事実は、ピーターの恋ではなく「二人の恋」を応援せざるを得ない愛しい気持ちを巻き起こさせる力がありました。

もうね、観客みんな親心。お見合いをセッティングしたような気持ち。

本当にこの2人のカップル最強すぎるので、幸せになってほしいです。

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3、私たちは皆「ベン叔父さん」だった

今回のMCU版スパイダーマンは「ベン叔父さんが既にいない」事が何よりも前2シリーズと異なる点であり、非常に重要なポイント。

つまり、ピーターを導き、ピーターを見守り、ピーターを愛するベン叔父さんは、観客そのものであり、そしてその役割を少しづつ皆が分け合っているんです。

親心と愛情を惜しみなく捧げるメイおばさん、父親代わりの背中を見せるハッピー、ピーターを引き上げるメンターとしてのアイアンマン。

ピーターの周りの大人たちの良い部分は、全てベン叔父さんの要素を分け合って持っている部分であり、ピーターを愛する観客の心もまたしかり。

それを一番体現するハッピーの存在が大きくフィーチャーされた今作で、その事をより強く体感しました。

 

そんな最高の青春映画「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」は全国公開中です。

 

※画像は全てimdbより引用