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「スノー・ロワイヤル」感想 ~リーアム・ニーソン主演、映画版「笑ってはいけない〇〇」【おすすめ度:★★★】

平成のブチキレおじさんことリーアム・ニーソンの主演最新作「スノー・ロワイヤル」。

意外にもアクション要素は少なめで、まさかのスローで不謹慎なボケ倒しブラックコメディでした!

 

★スノー・ロワイヤル

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監督:ハンス・ペテル・モランド

キャスト:リーアム・ニーソン、ローラ・ダーン、エミー・ロッサム、トム・ベイトマン

 

◆予告編◆

 

◆あらすじ◆

リゾート地で除雪作業に努め、模範市民として町から表彰まで受けるような善良な男ネルソン・コックスマン。

しかしある日、一人息子のカイルが麻薬中毒で突然この世を去る。

麻薬には手を出していない息子の死を不審に思い調査を始めるネルソン。

死の真相を突き詰めるうち、悪名高いギャング組織に1人切り込んでいくことに…!?

 

◆感想(途中までネタバレありません)◆

オリジナルは、同じくハンス・ペテル・モランドが監督をつとめ、ステラン・スカルスガルドが主演を務めた「ファイティング・ダディ 怒りの除雪車」

※凄い邦題…笑。

 

私は未見なのですが、監督も同じで、主演もリーアムにイメージの近いステラン・スカルスガルドが主演ということで、本作でどこをどうアレンジし直しているのかはちょっと気になるところです。

 

まず、昨今のイメージである「リーアム主演作=超絶リベンジアクション」というような作品ではありません

ここは予告編でもコメディ感を出しているところではありますが、それ以上にコメディ、しかもブラックコメディ寄りなので期待値ギャップがある方もいるかもしれません。

でも、リーアム=アクションのイメージが根底にある方が彼が演じるネルソンの役柄とのギャップに笑えるので、これまでの作品も履修済みという方は、それはそれで良いでしょう。

ちょっと殴り合いしただけで手が痛たたた…になってしまうリーアムに「そんなわけないでしょ」と一人心の中でツッコミを入れる楽しみがあります。

 

今回の作品、どちらかというと「クエンティン・タランティーノ×ウェス・アンダーソン」という掛け算のチャレンジな気がします。

タランティーノ監督の人の死の滑稽さを描く描写とそこまでに至るどうでもよさそうでそうでもない物語のテンポ感、ウェス・アンダーソン監督の様式美とシュールなユーモアの掛け算で生まれる箱庭感。

キャッチコピーの通り、勘違いと思い込みで事態が勝手に悪化していくという「まったく噛み合わない復讐劇」は、ともすれば悪趣味になりそうなところをリーアムが真ん中に立つだけでなぜかキリっと引き締まり、それでいていつもの殺人マシーンキャラとの落差が絶妙に気の抜けた感じを醸し出していて、なんとも独特の味わい。

 

これとこれを掛けた感じ!

 

場面転換の表現に遊び心が溢れていて、それがエンドロールまで貫かれるのがとても楽しいです(これは後ほどご紹介)。

 

※ここからネタバレあり※

 

 

そんな作品のテイストが、一番最初に感じられたのは息子の遺体との面会シーン。

「遺体は必ず頭部を手前にしていれること!」という本当にどうでもいい張り紙のクローズアップ(長め)。

息子の遺体が一番下の段に収容されていたため、キコキコと足でレバーか何かを踏んで目線の高さまで台をあげていくショット(異様に長め)。

そして、ゆっくりと下から登場する息子の鼻の先(と、キコキコ鳴り続けるレバーの音)。

カメラの写す範囲に息子が入るのを無言で待つしかないリーアムとローラ・ダーン(と、キコキコ鳴り続けるレバーの音)。

「あー、今笑ったら駄目なシーンなんだろうけどな、、、いやいや無理でしょ笑。」みたいな、観客を試すようなシーンが冒頭から登場します。

少し「笑ってはいけない〇〇」みを感じます。不謹慎!

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何を言っているか分からないかもしれませんが、完全に「笑ってはいけない」でした

 

そんな冒頭で本作のテイストを見せた後は、ひたすらのんびり且つテンポよくリーアムのギャング狩りを眺める2時間へ。

クラブへ乗り込み、息子カイルの死の直接的な原因となったギャング、通称“スピード”をあっさり殴っておさらば。金網で巻いて凍てつく川へ投げ捨てる(一度目)。

“スピード”から聞き出した名前を辿り、行きついたウェディングドレスショップのオーナー、通称“リンボ”を店内であっさり銃殺、金網で巻いて凍てつく川へ投げ捨てる(二度目)。

この「金網で巻いて川に捨てる」シーンが何度も何度も繰り返されるのですが、これがまたお決まりのシーンとして定着してくると、妙な達成感と不謹慎な笑いがこみあげてきます。

しかもこれ、「金網で巻くと魚が肉を食べるため遺体が残らない」という小説で読んだ知識を実践してみただけという笑。

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さらに、ご丁寧に退場してしまったキャラに対しては、その度にご丁寧に名前と通称、そして十字架マークが画面いっぱいに捧げられます。

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どことなくタラ監督やウェス監督の「第1章」みたいな章立てのカードを意識しているのかなと思っていましたが、後半に行くにつれてもはや殺しのシーンさえ写さずにこのご愁傷様カードが切られる出オチキャラも登場笑。

そして、ラストの打ち合いの後には、一人づつ出すのも面倒になったのか、画面いっぱいに12人分のご愁傷様カードが、綺麗に整理整頓されて掲げられるという有様笑。

 

最後エンドロールのキャストクレジットでは、画面いっぱいに主要キャストの名前が並ぶ中、「In Order of Disappearance」という通常と反対の手法で退場順にキャストの名前が雪になって舞い散っていくという非常に粋な方法で締めくくられます。

こういう様式美を2時間の中で観客に飲み込ませて、その応用で作品の魅力を作り出せるのはなかなか素敵ですよね。

 

そんな作品のテイストを理解してか、主要キャストもキャラ立ちさせることに全振りしたかのような演技を見せていてとても楽しい。

何も悪いことをしていない兄が殺されても、最後空からパラシュートで舞い降りてきた先住民の1人が除雪車でばらばらになっても(このオチの凄さ!)、ちょっと困り眉になるだけでその場が過ぎていくシュールさを醸し出せるリーアムの存在感。

リーアムの持つ真面目そうなイメージが、今回は「毎日せっせとギャング殺しに勤しむ」という方向に働いていて、味は活かしようだなあと感じました。

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そして最も世界観にあっていたのが、ギャングのボス・ヴァイキングを演じるトム・ベイトマン。

元妻には親権問題で上手に立たれ、部下には舐めた口をきかれ(禁止しているシリアルを部下たちが息子にあげていることも気づかない!)、拉致された息子も拉致生活を楽しんでいるという何とも情けないキャラを、アホなほど真っすぐ演じていて愛らしい。

基本的に本作で事態を悪化させているのは彼の勘違いと先入観と偏見でしたね。

それに一つも気づかずに突き進んでいく姿がまた可笑しくて。

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息子役の子もよかったですね。

あの母親に100%血を貰ったのであろう賢さと、除雪車にわくわくしちゃう少年心。

「お休み前にお話して欲しい…」と言って、良い物語本がなくてリーアムが除雪車ガイドブックの解説文を読むのを楽しそうに聞きいる姿が可笑しくて可愛くて。

ヴァイキングをおびき出すために誘拐したとはいえ、彼と絆をはぐくんでいくリーアムとのシーンはシュールでブラックな本作の中でもほっこりしていて好きでした。

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女一人でこの作品を観てクスクス笑っているのはそれはそれでヤバイかなとは思いつつも、劇場もくすくすムードだったので遠慮せずに楽しく鑑賞できました。

好きな人にははまるテイストだと思います。

 

 

「スノー・ロワイヤル」は全国公開中!

 

 

※画像は全てimdbより引用