5月13日放送、シーズン8<最終章>第5話感想。
えー…、ちょっと言葉が纏まりそうにもありませんが頑張ります。
※ネタバレあり※
◆約束されていたデナーリスの闇堕ち、最後の一押し
デナーリスの孤独と憎悪が最悪の形で爆発してしまった第5話でした。
「最悪」なんてものではない、想像を絶する描写に唖然。
最終章に入って忠臣ジョラーを失い、レイガルを失い、そしてミッサンディを目の前で処刑されるという苦痛に揉まれてきたデナーリスですが、それまでにも所々で覗かせるマッドクイーンぶりに一抹の危うさを滲ませていました。
そもそも、S1のときから彼女自身にそうした危険な兆候があった事は疑う余地もない上、四肢をもがれていくような喪失の連続。
特に、彼女の善性を愛し、適切に助言してストッパーになってくれていたジョラーの死は大きな痛手。
そして今回、ティリオンの告発からヴァリスの裏切り(私はヴァリスを支持するけどね)、そして芋づる式にジョンの裏切りとサンサの秘密漏洩までが露呈。
誰しもが彼女に敬愛の目を向けていたあの頃とは違い、身近な人間たちまで彼女を暗い瞳で見る現状を憂い、そしてサンサの狙いを正しく理解し不安と疑念を感じるデナーリスでしたが、最終的に彼女の闇堕ちの最後のダメ押しとなったのは、ジョンの裏切りとそれでもただ無情に繰り返される「My Queen」だったのかもしれません。
ジョンには、自分との約束を破ってまでも立場を危うくするような秘密を伝える相手(そしてそれは、自分を追い詰める方法を知っている相手)も、付き従ってくれる民もいる。
それには100歩譲ったとしても、出生の秘密を知ってしまった彼はもう、かつてのようには愛してくれない。
自分を裏切って秘密を漏らした彼の「My Queen」にはもう、求めているものはない。
You Know Nothing , Jon Snow.
王都戦をあっという間に制し、鐘が鳴らされ降伏が示されたにも関わらず、ただひたすらにサーセイを睨みつけるデナーリスの顔。
ため込まれてきた不安、疑念、憎悪、怒り、孤独…全てが凝縮され、ただ一つの点だけを射落とすように見つめるその表情の気迫に引き込まれてしまいました。
ああ、焼き尽くしてしまうのね、という絶望感。
エミリア・クラーク、凄くいい演技してましたよね。
あのサーセイでさえ「人民がいれば王都へは攻め込まない」と思っていた“常識”を軽々と覆してしまったデナーリス。
私に跪かない、私を受け入れない民は、救うべき民ではないのか?
これほどまでの壮絶な闇堕ちを見てしまった後に、シーズン1から5あたりまでの彼女の華麗なる成長をどういう目で見ればいいんでしょう…。
そして、あの王都の惨劇、ティリオンが命を懸けてでも防ごうとしたあの惨劇を、シリーズかけて主役だと思わせていたジョンにもその一因があると示すような脚本。
もう、ジョンがここまで生きながらえている理由って、デナーリスの排除に何かしら手を打つためでしかないのではないだろうか…。
◆怪物はただただ弱く孤独な少女だった
サーセイのラストは「優しすぎる」と賛否両論のようですが、私はこの結末も有りだなあと思いました。
家名の存続と繁栄しか頭にない冷徹な父の元、女だからという理由で期待されずに育てられ、嫁いだ王には初夜に別の女の名前を囁かれ、子供は全員死に、双子の片割れとしか通じあえず、そんな弟とも袂を分かってしまった孤独な人。
彼女の苦悩と、そこからの諦めと達観、糸を張り詰めたように心を殺して自己実現として女王の座に就くまでを(悪役ではありながら)しっかりと描いてきたからこそ、想像を絶する光景を前にして見せた怯えた表情、ジェイミーを前にして見せた少女のような泣き顔、「この子を生かしたい…死にたくない…嫌だ」という言葉に、そんな弱さや醜さも人間だよねと頷かざるを得ません。
そして、そんなぼろぼろの泣き顔はシリーズで一番美しかった。
まぎれもなく、レナ・ヘディの演技の真骨頂。
彼女を受け止めるジェイミーの「俺たちだけだ」という言葉は、せめて安堵の中でサーセイを逝かせてやりたい(そして自分も)というせめてもの優しさに見えました。
前回、ブライエニーと関係を持ちその高潔さに触れて、自身の愚かさの亡霊でもあるサーセイを殺しに行くのだとばかり思っていましたが、そうかそんな高潔なブライエニーを前にしても「サーセイ」と聞くだけで胸騒ぎが起きてしまう自身の愚かさを突きつけられた結果のアレだったんでしょうかね。
みんなが予想していたジェイミーのフラグ、「キングスレイヤー」ではなく、「死ぬときは愛する人の腕の中で」の方が美しく回収されてしまった…。
しかし「若く美しいクイーンに全て奪われる」という魔女の予言が、デナーリスに奪われるのは想定内として、こういう形での「奪われる」だと誰が予想したでしょうか。
予言通りすべてを奪われた、それでもある意味ジェイミーだけは奪えなかったのだと思うと、なんて悲しくて歪んだ美しい恋愛物語なんだろう。
◆ハウンドとマウンテン、アリアが見た戦場
王都に向かうハウンドとアリアのコンビ。やはり絵になる!
ドラゴンの急襲に直面し、自身を守ろうとするハウンドに対してアリアが放った「サンダー…、ありがとう」。
初めて名前で呼んだ!という感動と、共に旅をした因縁の少女に対するハウンドのどこまでも不器用な優しさ。
そして、意外にも回収されない伏線が多い中、このクレゲイン兄弟の因縁はしっかりと拾ってくれましたね。
オベリンの惨劇を思いださせるマウンテンの目潰しに悲鳴を上げつつも、最後マウンテンを道連れにして自身のトラウマでもあった炎の中へと堕ちていくハウンドの姿は英雄然としていました。
ハウンドの死闘ぶり、このエピソードの中で一番カッコよかったのでは!?
そんなハウンドに活かされたアリアが目の当たりにした、崩壊していく王都の惨状。
手を差し伸べてくれた家族を救おうとした行為が裏目に出てしまう悲劇。
まるで冬の雪のように崩れ落ちた王都に舞い散る灰。
そして、目の前に現れる一頭の光輝く白馬。
もうこれ、、、光の王でしょ、、、あまりに神々しい宗教画のような映像に震える。
アリア、緑の目の狂王を倒せるのは彼女しかいない。
◆真のラニスター・ティリオンの情
「ラニスターは常に借りを返す」
この世界において、各家毎の標語は非情に重要な要素を持っていますが、ティリオンがティリオンたるその情の深さがあふれ出す名シーンで、彼は誰よりも正しく「ラニスター」であることを証明したなと思います。
自分と対等に接し、理解し、愛してくれたジェイミーを命がけで逃がすティリオン。
ああ、S4で死刑前夜に彼が同じようにしてくれた事への恩をここまで深く持っていたんだなあと思わされる名シーンでした。
ティリオンは知略の人だけど、それ以上に情の人。
様々な因縁があるサーセイをそれでもジェイミーとともに逃がそうと考えるその情の深さは、強さでもあり弱さでもあり、それがきっと心の中では疑念を持ちつつもデナーリスを捨てきれなかった要因なのかも。
彼女を止められなかった事を、一番悔やんでいるのはきっとティリオンなのでは。
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シリーズのファンに一番ダメージを与えたであろう「キャスタミアの雨」はS3E9。
あの時はまだ、ロブにしろキャトリンにしろ、放送開始から3年ぐらいしか経っていませんでしたが、もう私たちは8年間この物語を追いかけてきているわけです。
S1でドスラクに売られながらもそこから這い上がってきた少女が、順調に兵とドラゴンと恋人と親友と忠臣をゲットして意気揚々とウェスタロスに向かっていく様を、希望に満ちた画として観ていた日が懐かしい。。
あの頃、ふとよぎるデナーリスの無慈悲さ、危険性にどこか気づきつつ、それでもあがないきれないドラゴンや都市を制圧していく彼女の魅力、その気持ちよさを前に気づかないふりをしようとしていた視聴者の甘えへ製作陣はしっかりとその代償を示して見せたんだなと思います。
綻びが積もり積もってここまでの形になるなんて、8年の歳月をかけた見事な揺さぶり。
こうなるのはもそこそこ覚悟していたけど、やっぱり無理!辛い!
おそるべしゲーム・オブ・スローンズ。
しかし、これあと1話で収集つくのでしょうか?
正直、最終シーズン結構駆け足だなと思う所もあるんですが、もうここまでやってくれたのなら最後まで私たちの想像を超える物語と映像を魅せてくれ!という気分です。
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↓シーズン8<最終章>各話感想↓
※画像は全てimdbより引用