4月29日放送分「ゲーム・オブ・スローンズ」最終章第3話。
緊張と絶望に押しつぶされる、全編戦闘シーンで構成された90分間。
時系列で書こうと思ったけれど全然纏まらないので、キャラ毎にします。
※ネタバレあります。ネタバレしかありません※
◆全体として…暗闇が炎を飲み込む絶望
「ハードホーム」「落とし子の戦い」といったシリーズ屈指のエピソードを仕上げてきたミゲル・サポチニク監督が手掛けるという時点である程度のことは想定していましたが、それでも不十分でした。
暗闇と吹雪の中にあって、夜の王の姿もホワイトウォーカーたちの姿もまったく見えない恐怖。
登場人物たちと同じ視点で見えるものしか見せない、彼の冴えわたる演出が作り出す絶望感で包まれていました。
特に闇と炎との対比が素晴らしい。
ここに至ってその正体は不明ながらも、「光の王/Lord of Light」にすがりたくなるほど「炎」が持つ希望としての存在が色濃く出ていましたね。
しかしながら、メリサンドルの帰還によってもたらされたドスラク人たちの刃の炎はあまりにむごい速度で消え去り、彼女が使命を果たすべく灯した堀の大火もまた、操られたホワイトウォーカーたちの特攻によって消され橋とされてしまう。
暗闇が希望の炎を飲み込む様を何度も突き付けることによって見せる絶望。
やはり「落とし子の戦い」の監督は裏切らないなあ。。。
◆城内の地獄絵図
城壁は登って超えらてしまうのが戦闘シーンのお決まり。
その城壁、そして場内を守るのはジェイミー、ブライエニー、トアマンド、ポドリック、ダヴォス、サム、エッド、ドンダリオンにアリア、ハウンド、そしてリアナ・モーモント。
遂に超えられてしまう城壁、そして扉。
ホワイトウォーカーたちがかつてのように唸り声をあげるような状態ではなく、あくまでさーっと、さらさらと、あくまで「数が押し寄せる」かのように描かれるのが凄い。
どんな強敵、剣の名士たちとも戦い勝利してきた歴戦の戦士たちの前に立ちはだかる最大の危機が、何の剣術さえ持たない「数の絶望」だというのがたまりません。
常にブライエニーの横で戦うジェイミー。
ブレーヴォスで学んだ棒術で華麗なる戦いぶりをみせるアリア。
サムは今回いいとこなし。残りの3話でエッドの死を無駄にしない活躍をしてくれ…。
そして、夜の王の号令で一斉に立ち上がる死者たち。
「ハードホーム」でチラ見せしていたあの恐怖をここで使ってくるのね…。
本当に、「こんなのどうすりゃいいのさ」と、まだ3話あることを知っている視聴者さえ希望を失った瞬間でした。
◆人の上に立つ者としてのリアナ・モーモント女公の勇気
リアナ・スタークから名前を取って名付けられた、ベアアイランドの幼き女城主。
初登場時からその威勢のよさ、発言の正しさ、わからない事は側近に質問できる素直さ、そして意見を貫く強さ、幼いながら城主たる人間としての威厳を備えまくっていたリアナ・モーモントが亡くなくなりました…。
亡者となった巨人に小さな体で向かっていくリアナ・モーモント女公格好よすぎでしょ…。
決死の一撃で巨人に向かっていくも、巨人に捕まれた際に骨の音がするほどの力で握りつぶされたことで絶命なんて、ほんと、子供だろうと容赦がないな…。
実はこれまで、彼女の出番の増加は、キャラクター造形と役者の上手さで思っていた以上に人気が出たことによるものかなと思っていました。
(ほんとに凄い。あの威厳を10代で出せる役者なかなかいない)
だけど、最後のあの巨人との闘いのシーンで、半分正解で半分不正解だなと。
大の男も恐れる巨人に対し、小さな小さな女戦士が立ち向かうという図。
巨人の掌に収まってしまうほどの子供が、死に絶えながらもその巨体に剣をつき刺すという図。
これはこの物語上どうしても描きたい画でしたね。
どこまでも上に立つ者としてのふさわしさにあふれたリアナ・モーモント、R.I.P。
◆サンサとティリオンの絆
「地下墓所は安全だ」と聞くたびに、絶対にフラグだ…と思ってきましたがやはり。
城内まで入り込んだホワイトウォーカーたちは、「出来る事がない」サンサ、ヴァリス、ティリオン、ミッサンディらと女子供が避難する地下墓所へも到達します。
逃げ惑う人々。死角に隠れて息をひそめる人々。
女城主としては有能ながら、戦闘能力のない自身にある種の絶望を感じるサンサ。
同様に、戦場で出来ることはないと突き付けられたティリオン。
だけど、それこそがこの2人にとっては正しく勇気ある決断なんですよね。
無謀さだけが称えられる物語でなくて本当によかったなと思います。
「最もマシな夫だった」という会話、サンサの掌にキスをするティリオン、生き残るべき2人が危機的状況で見せた互いに対する慈愛?のようなものは、お互い苦難の道を経てきたからこそ到達できる極地。
賢く、そして人を想えるこの2人が王都と北を納めたら万事OKなんじゃないかな…。
◆許され、迎え入れられたシオンの最期
思えばこれまで、可哀そうなぐらいいいところの無い人生を歩んできたシオン。
その傲慢さが仇となって、スタークにもグレイジョイにも見捨てられた男。
彼の最期はずっと「グレイジョイとして」果されるのだろうと思っていましたが、そうか「スタークとして」をも併せ持っての死だったんだね…。
リークを脱してからのシオンは、これまでの自身を悔いるかのように善い行いをしよう、家族を守ろうという何かに突き動かされるような運命をたどって来ました。
その度に腰抜けだった彼は強くなり、学んできました。
サンサを助け、ヤーラを助け、再びサンサを助けんと戻った北部でブランを救う。
「You are Good Man. Thank You」というブランの言葉が、彼がたどり着いた全て。
夜の王に向かっていったその勇気こそ、彼がたどり着いた強さです。
◆アリアの大金星と、それを成し遂げさせたもの
まさか、夜の王を倒すのがアリアなんて…!!あまりの英雄譚に震えました。
シリオ・フォレル師匠、彼女は死神に「Not Today」を突き付けてやりましたよ。
ジャクエン・フ=ガー師匠、彼女は最強の暗殺者として奇襲に成功しましたよ。
S3でアリアの目を見て「暗闇の中から私をみている…茶色の目、青の目、緑の目…永遠に閉じる目が」といったメリサンドルは、どこまで見通していたのでしょうか。
希望と戦意を失っていたアリアを再び奮い立たせ、「Not Today」を言わせたメリサンドルをここまで生きながらえてきた使命とは、炎はもちろんこの瞬間のためだったのかもしれません。
全てが終わり、チョーカーをはずして一人雪の中でぱたりと崩れ落ちた姿は、哀しくも美しく神々しかった。
そしてまた、「光の王」を信仰するドンダリオンとハウンドがアリアを守ったという展開にも震える。
何度刺されても道を塞がんとするドンダリオン格好良すぎ…。
何度も死んでは蘇ってきたドンダリオンの生は、さらに言えば彼を蘇らせるために傍に居続けたミアのソロスの生は、アリアを守るためにあった。
炎への恐怖をここに至ってもなお克服できずにいるハウンドもまた、アリアのためなら奮起できた。
ブランを襲い、七王国の混乱の元凶ともなったベイリッシュの短剣が、巡り巡ってブランを守り、七王国を暗闇から救った。
8年かけて紡がれてきた物語がひとつの結論に向かって進んできていたという事に否応なく興奮するし、その偉業を成し遂げるために連なるキャラクターの繋がりが、ジョンやサンサやデナーリスなどの主役級ではないサブキャラクターたちによるものである所が最高にクール。
しかも、最後の華麗なる「剣の持ち替え」技も、S7でブライエニーとの手合わせシーンで片鱗を見せているんですよね。
その時、ニードルを飛ばされて短剣を抜き、それを別の手へと空中で持ち替えるアリアの剣さばきの上手さにはっとしたものです。
伏線の張り方が半端ない。
そして、あれだけ名前の付いたヴァリリア銅の名剣が集結していたにも関わらず、唯一“名前の無い”剣であったあの短剣が夜の王を倒す事になるのがまた素晴らしい。
父エダードと同じ“スターク風”の髪型の名家の娘たるアリアと、名も無い剣を持つ名もなき暗殺者たるアリア。
彼女の出自と、旅路の双方があってこそたどり着いたゴールは感慨深すぎ。。。
ちなみに、、、
アリア役のメイジー・ウィリアムスは、S1時オーディションで選出された演技実績のない無名の子役だったわけです。
S1時にどこまでラストが決まっていたかはわかりませんが、そんな子に8年かけた大作のハイライトを任せるという英断が出来るHBOは凄いなあとしみじみ思います。
8年間、毎年のように風貌が変わっていったメイジーが最終章であのビジュアルと貫禄に到達していたことも奇跡的だし、彼女の身体能力の高さを当時どこまで測れていたのか本当に興味深い。
(サンサについても同じことを思っていますが、それはまた別で)
◆我が最愛の騎士サー・ジョラー・モーモント逝く
シーズン1からずっと公言してきた最愛の騎士ジョラーがなくなりました。。。
シーズン8に登場する事が確定した時点で、夜の王との対戦でデナーリスを守って死ぬのだろうと粗方予想はついていましたが、それでもやっぱり辛い。
敵陣でドロゴンから振り落とされたデナーリスの危機的状況に、他の誰でもないジョラーだけが駆け付け、何度剣で刺されても立ち上がる姿には、これまでいくら視聴者にストーカーと呼ばれようともデナーリスの元に戻ってきて彼女を守ってきた男の神髄が溢れていました。
デナーリスに「もういい」と腕を差し伸べられようとも振り払い、命が続く限り剣を振り続ける姿、もう涙とまんないよ。。。
何より、彼の最期の台詞が「痛い…」なのがもうダメ。
これまでデナーリスにどんなに冷たいことを言われようとも、どんなに強敵と戦おうともぐっと口を一文字にして食いしばって耐え忍んできたジョラーがですよ。
最期に「愛しています」さえ言えなかったけれど、その行動で痛いほど伝わる彼のデナーリスへの愛。
誰の死にも、誰との別離にも、ぶっちゃけドロゴとの別れの時でさえあそこまで泣いていなかったデナーリスが、まるで少女のようにジョラーを抱えて泣きじゃくる姿ももうダメ。
使ったことさえない剣を手に握りしめ、ジョラーとともに戦ったデナーリスは、きっと、、きっと、、少し人間らしい心を取り戻してくれていると、、思いたいです。
しかしですよ。
あれだけシーズン1から引っ張ってきた夜の王との闘いが最終章中盤で終了してしまうという衝撃!
本当の敵はサーセイ。人間対人間なんですね。
シリーズのクライマックスと思われた戦いで、シリーズの主役格であるはずのジョンやデナーリスが驚くほど活躍できなかったのもおもしろいし、動きを封じ込められてしまったドラゴンたちもまたしかり。
残り3話あることが、嬉しい反面、「これだけの死闘のあとにまだ3話もあるのか」という絶望になるなんて、最終章始まる前は考えもしませんでした。
次回以降、本当に予想もつきません。
↓シーズン8<最終章>各話感想↓