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「ある少年の告白」(映画)感想 ~ジョエル・エジャートン、俳優としての自分の魅力を最適に配置する監督力【おすすめ度:★★★】

華のあるハリウッドスターの中で珍しいくらい、不器用そうな、無骨な風貌が持ち味。確かな演技力で活躍を続けるジョエル・エジャートンの「ザ・ギフト」に続く監督第2作目「ある少年の告白」の感想です。

 

★「ある少年の告白」

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◆予告編◆

監督:ジョエル・エジャートン

キャスト:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エジャートン、グザヴィエ・ドラン

 

◆あらすじ◆

大学生のジャレッドは、ある出来事をきっかけに自分は男性のことが好きだと気づく。

両親は息子の告白を受け止めきれず、同性愛を「治す」という転向療法への参加を勧めるが、ジャレッドがそこで目にした口外禁止のプログラム内容は驚くべきものだった。

自身を偽って生きることを強いる施設に疑問と憤りを感じた彼は、ある行動を起こす。

 

◆感想(ネタバレあり)◆

LGBTQについての映画の製作本数はここ数年で増えてきているように感じます。

トランプ政権下となったことでより多様性についての議論が活発化した事で、様々な愛、自由、人生、権利についてのメッセージがこうした「作品」に内包される形で投げかけられるようになったのでしょう。

本作も、ものの10年ぐらい前?に実在した(そして今もまだ存在するのであろう)「性的指向は矯正できる」とする恐ろしい思想と矯正施設の実態を通して、あらためて同性愛者としての自身を受け止めていく主人公と家族の姿を描いた作品です。

非情に難しい題材ながら、監督2作目となる俳優のジョエル・エジャートンが脚本も手掛け、映像化に成功!

 

矯正施設でのプログラムとして描かれるのは、あまりにお粗末で非科学的で末恐ろしい内容ばかり。

それは、“男らしさ”を叩き込んだり、椅子を向かい合わせて「父を憎め」と刷り込んだり、自身の同性愛経験を語らせるといったプログラムを通して、同性愛の全てを「罪」だと責め立て強迫観念を植え付けていくようなもの。

しかし、現在でも34の州ではこうした施設を禁ずることが法律で整備されておらず、既に70万人もがこうしたセラピーを受けたそうです。

同性愛は戒められるべきものと解釈できる聖典の言葉によって、キリスト教保守派の色濃い地域では特にそうした考え方が今もなお根強く残っているのでしょう。

 

そうした保守的思想の人々の中にあって(そしてそれは自分が信じて浸透させてきた信仰でもある)、息子の告白を受け入れることが出来ないジャレッドの父で牧師のマーシャル。

それでも、心のどこかで息子を受け止めたいという想いが見え隠れするラッセル・クロウの演技。

家族への愛情と、牧師としての自身の信条・信念とのせめぎあいに苦しくなります。

さらに、これまた保守的な地域らしい家父長制の悪しき習慣で、男たちが息子の処遇を決めそれに従うしかなかった母ナンシー。

のちにその過ちに気づき行動に移すニコール・キッドマン演じる母ナンシーの愛が、そうした様々な根深い問題を断ち切るための助けになります。

 

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はじめは「治せるのかもしれない」とさえ思っていたジャレッドは、矯正施設の人々の様々な葛藤に触れ、自身の“問題の原因”を振り返っていく中で、ありのままの自身の姿、自身の想いに気づいていきます。

家族が完全に一つになることはないけれど、ありのままを受け止めてそれぞれが進むべき方向へ進んでいく姿にぐっと涙腺が刺激される。

ラッセル、ニコールに引けを取らず堂々の主演ぶりを見せるルーカス・ヘッジズがとても頼もしい!

プログラムのメンバー役でグザヴィエ・ドランが出演しているほか、テイラー・スウィフトの今カレであるジョー・アルウィンがジャレッドにトラウマ的な体験をもたらすヘンリーを演じています。

このヘンリーとの一件のこじれ方が、ジャレッドから「被害者」という事実をはぎ取ってしまったのが怖かった…。

 

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しかしなによりもびっくりしたのは、ジョエル・エジャートン演じる施設長サイクス。

彼らしい不器用そうで得体の知れなさも持ったサイクスについて、本編末で語られた「現在は夫とともに暮らしている」という字幕の破壊力。

夫…????

いやー、全然気づかなかった…。

あの不気味で無意味なプログラムの数々は、サイクスが異性愛者として生きていくために自分自身に課したものだったのかもしれないと思うと、いたたまれない想いになります。

こうして生まれてしまった自分の原因として「父を憎む」こと。

男らしくたくましくあること。

極力お互いに触れあわないこと。

全てのプログラムは、自分を変えなければという強迫観念から出来たのかもなあ。。

こんな情報を、こうもさらっと出してくるジョエル・エジャートンおそるべし。

 

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◆で、ジョエル・エジャートンっていったい何者なの?◆

傑作「アニマル・キングダム」で観て以来、あの無骨な風貌と繊細な演技が大好きな俳優ジョエル・エジャートン。

アニマル・キングダム(字幕版)
 

ディカプリオ版「華麗なるギャツビー」のブキャナン役や、最近だとジェニファー・ローレンス主演の「レッド・スパロー」なんかもよかった。

華麗なるギャツビー(字幕版)
 
レッド・スパロー (字幕版)

レッド・スパロー (字幕版)

 

 

そんな彼が本作と同様に監督・脚本・製作・出演の4役を果たした監督デビュー作が「ザ・ギフト」

ザ・ギフト (字幕版)

ザ・ギフト (字幕版)

 

 

ミニマムな作品ながら、主要人物たちの関係性がじわじわと変わっていく様、嫌~な背筋の冷え方をする物語運びの上手さが光る幸先の良い監督デビュー作です。

この作品の中でも彼は、レベッカ・ホールとジェイソン・ベイトマン夫婦のもとに訪れる得体の知れない恐怖の対象を、あの無骨な風貌を活かしたキャラ造形で演じています。

「華麗なるギャツビー」のブキャナン、「レッド・スパロー」のナッシュなど、彼は演じるキャラの不器用さや生き辛さを見せるのが上手いんですが、そんな不器用さに重ねて本作や「ザ・ギフト」のような得体の知れなさを醸し出すのが最高に上手い

そんな自分を最適な役に配置し、最適に配分できる知性。

「ザ・ギフト」と本作は、監督と脚本、出演を兼ねるからこそ、自分の持ち味の出しどころや、自身が作品に与える雰囲気をベストな形で昇華できているように感じます。

 

そして、個人的には情報の出し方やそのリズムが好き。

ジャレッドの過去の振り返り、その中におけるグザヴィエとの出会いの美しさ、そうしたシーンと現在とが割とシームレスに連なっていくような構成。

本作では正直ちょっとわかりづらい部分もあるのだけれど、「ザ・ギフト」での真相に迫る情報の出し方がとてもうまくて、きっとここは彼のもう一つの持ち味になっていくのではないでしょうか。

 

かつてから映画製作に興味があって学んでいたらしく、頭がよくていろいろと俯瞰して観れる人なのでしょう。

監督としてはまだまだ2作目。

これだけのキャストが集まり、配給権の取り合いが起こるような状況であれば、ネタ探しには事欠かないはず!

次回作も楽しみです。

 

 

※画像は全てimdbより引用