2018年、良かった作品を振り返る企画。
今回はこちらを!
★2018年、最もロマンティックな映画『シェイプ・オブ・ウォーター』
・あらすじ:声の出せない主人公が、半魚人と恋におちます。
・予告編:
え、半魚人!?。思いますよね、そりゃ。
アカデミー賞のニュースで初めてこの作品を知った方等、びっくりしただろうなあ。
それぐらい画期的な作品で、それがアカデミー賞を取ったということは、語りたい強い物語とそれを伝える最高のクリエイティブは、常識や慣習も超えて人の心を捉えるのだという事を感じさせる素晴らしい瞬間だった。
監督のギレルモ・デル・トロ。
『パンズ・ラビリンス』でみせた厳しさと優しさの同居する視線、拘り抜かれた世界観とキャラクターの造形美に真骨頂があると思っているのだけど、本作はどこか『パンズ・ラビリンス』とも通じるものがある。
監督は「『美女と野獣』が嫌い。なぜ人は外見では無いという話なのに、ベルは美しい処女で野獣はイケメンの王子になるんだ」と発言していて、実際に『美女と野獣』の監督の打診をキャンセルしていたりする。
この作品は怪物や異端のものを描き続けてきた監督の執念と人間性・想いの結晶。
そしてそのラブストーリーを、「水」によって描く。
タイトルの「シェイプ・オブ・ウォーター」、水は愛と一緒だと監督はインタビューで述べていますが、まさに本編中での水の表現が見事。
風呂、ゆで卵のお湯、水槽、雨…。
徐々にカサを増していくスクリーンの中の水量、主人公の部屋からあふれ出て雨とまじりあい、そして川、海へと繋がり一体となっていくその様に2人の愛の姿を映し出すという、あまりのロマンティックさに胸がぎゅっとします。。
何を言ってるんだと思うかもしれませんが、半魚人、可愛く見えてくるんだなあ、これが。
(この半魚人の「目」も、アカデミー賞を受賞した辻一弘さんが手がけているんだそうな)
そんな愛の物語を、60年代のレトロ感、ティール色という深く優しい緑色、キュートな小物や古い映画などを交えて描く本作は、全ての瞬間を切り取って写真集にしたい程、宝箱のような場面の連続。
まるでティム・ウォーカーの写真集のよう!まじで欲しいよ、設定資料集!
と、ここまではおとぎ話。
おとぎ話には現実が必要。ティム・バートン『ビッグ・フィッシュ』で学んだこと。
以下完全なネタバレになりますが、
ラスト、半魚人は主人公イライザの首にあった傷をエラに変えて、共に深い海の底へと誘います。
イライザの赤い靴が脱げ落ちていくのが象徴的。
人魚姫は、王子を見つけて海へと帰っていきました。めでたし、めでたし。
だけど、ナレーションでは「愛と喪失の物語」と言ってるんですよね。
そう、ずっとこの作品は、隣人の画家・ジャイルズの視点で語られているのです。
だから、銃弾を受けたイライザが人魚姫になって半魚人と結ばれたというのは、死にゆく彼女のせめてもの願いをかなえたいというジャイルズの創作かもしれない。
それでもなお、その美しい幸せなエンディングを信じさせてもくれる映画の力。
『ビッグフィッシュ』や『パンズ・ラビリンス』に通じる、そうした創作に込められた哀しい優しさ、個人的には号泣ポイントなんですよねえ。。同じ人いないかな。
やっぱり、デルトロは厳しくて優しいなと感じた大傑作。